ホットコーヒーとAND計算は仲間

量子コンピュータ

量子コンピュータ。最近よく聞きますよね。私もです。今月の日経サイエンスでも表紙になっているくらい。バズワードっぽくて今まで量子コンピュータに対して斜に構えていたのですが(偏見)、Googleが量子超越に関する論文を発表したと知って、IT巨人に僕の暗号全部持っていかれるかもしれないと怖くなったので関連書を読んでみることにしました。

「驚異の量子コンピューター」

去年の11月に刊行されたばかりの本で、大学生協の本コーナーに目立つようにに陳列されておりました。この本の著者である藤井教授は、Googleの量子コンピュータが量子超越性を達成したという論文(https://www.nature.com/articles/s41586-019-1666-5)の査読者の一人です。また藤井研究室のホームページを尋ねると量子コンピュータに関する様々な文献を参照することができる。

「量子コンピュータの基本と仕組み」

量子コンピュータは私の専門ではないので、補助教材として図解入門書であるこの本も読みました。専門の人からするとはしょり過ぎではみたいなところもあるかもだけど、初心者からしたら絵が多くてわかりやすいです。

面白かったところ

情報科学と物理学の繋がりが見えるところ

門外漢からすると今まで情報科学というのは理論がメインで、想像しづらい世界というイメージを持っていました。情報科学の教科書には離散的な数字や集合理論ばかりが出てくる数学的な感じ。ただし、これはデジタルコンピューティングによる恩恵ともいうことができます。

コンピュータを使ってプログラミングや数値計算をするときに、半導体デバイス上の電圧変化や電子の蓄積に関する物理法則を知らなくても良いですよね。トランジスタ内の電圧の連続的な値に対してしきい値を設けることで、アナログ信号を0と1という離散的な信号に変換し、本体の物理系とは別にコンピューター上の動作を議論することができるのです。

その点について、本書では情報科学と物理学が1980年代から同じ土俵で議論され始めるようになり、量子コンピューターが提案されるようになるまでの背景が非常にわかりやすく説明されています。

少し本筋から逸れますが、個人的に特に関心を持ったのは物理学上のエントロピーが情報科学上でも成立することです。

これはランダウアの情報消去の原理というものらしい。不可逆な計算が行われるとそこでエネルギーの消費、CPUの発熱が発生するというのだ。

例えば情報を反転させるNOT演算

  • 入力1→出力0
  • 入力0→出力1

という処理では入出力が1対1で対応しているので出力後も入力した情報を推測することができます。これは可逆計算である。

一方1と0の世界での掛け算(AND計算)は

  • 入力0,0→出力0*0=0
  • 入力1,0→出力1*0=0
  • 入力0,1→出力0*1=0
  • 入力1,1→出力1*1=1

ここでは0という出力を得た時に1つ前の入力は推測することができない(3通りの可能性があるため)。これは不可逆計算である。ということはAND計算では前のステップの情報が失われてしまているので、ランダウアの情報消去の原理により、計算途中でエネルギーが消費されて発熱してしまう。一方NOT計算は理論上は発熱しない計算ということになります。

つまり情報量は物理学でいう乱雑さに対応し、乱雑さが少なくなる方向に状態が変化する(情報を失う)ためにはエネルギーが消費されるということです。

あったかいコーヒーを放っておくと放熱して冷めてしまうのも同じ不可逆現象です。

(参考:ランダウアーの原理)

http://brownian.motion.ne.jp/13_IdeaFromRevComputer/03_LandauersPrinciple.html

教科書に熱力学の式が出てくると体調が悪くなる私ですが、ランダウアの原理には情報科学と物理学の繋がりを垣間見ることができて、非常に引き込まれました。今までこんなこと気にもしたことがなかった。

本書ではこの不可逆計算とCPUの発熱に関する議論から量子コンピューターの発送への過程がわかりやすく説明されています。

物理学が成熟して量子レベルで世界の仕組みがわかってきたこと、そしてCPUの微細化限界や発熱問題といった時代背景から情報科学に物理学的なアプローチが必要になったタイミングの重なりによって量子コンピュータという学問が誕生し、リアルワールドの原理原則である量子をコンピュータの動作原理にすることによって、将来的にはコンピュータの中でリアルワールドのシミュレーションができるようになる。

科学技術の点と点の繋がりが見えてくるので、とても面白いですね。

量子力学と量子もつれに関する教科書がうちにあるのでもう一回勉強しなおしたいと思いました。履修当時はヒーヒー言いながら勉強していた記憶が…。

次なる興味

イミテーションゲーム(映画):観賞済み

コンピュータの産みの親、アラン・チューリングの映画。エニグマ解読マシンかっこいい。イギリス紳士カッコいい。

エニグマ アラン・チューリング伝(本)

↑映画の原作買っちゃった。修論終わったら読む。

量子力学の勉強

時間があれば。

ナチュラルコンピューティング・シリーズ 可逆計算(本)

自然現象を利用したコンピューティングの本。自然現象に触発された情報処理メカニズムにより新しいアルゴリズムを探求する学問らしい。その中でも可逆計算にフォーカスを当てているのが本巻。ビリヤードボールモデルとか書いてあるが、ビリヤードボールって自然現象なんですか…?🎱

以上量子コンピュータと物理について。誤った解釈をしてしまっているところがありましたら是非ご指摘願います。

とりあえず量子+スピリチュアル的な方々はさっさと退散してくれ。

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